弁護士 中村真は、主に交通事故案件を中心に活動し、豊富な経験をもとに数多くの交通事故被害に遭われた方のために尽力しています。

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「源泉徴収」されたのに納付されていない!?そんなときの問題

税務カテゴリー  2018/11/08 UPDATE

例えば30万円の給与について、
名目上、10.21%に相当する30,630円が引かれ、
269,370円が支払われていた。
けれども、支払者が30,630円の源泉徴収税を
納税しておらず、源泉徴収票も交付されないというケース。
このとき、労働者の課税はどうなるのでしょうか。

 

我々弁護士は依頼人から報酬の支払いを受ける場合、
依頼人が個人でない限り、
その金額から源泉徴収された額の
支払いを受けることとなります。


税法上「源泉徴収」と名の付くものは全て
所得税法に定められているのですが、
例えば、弁護士報酬の源泉徴収でいうと
その根拠条文は、
所得税法17条及び204条1項2号となります。

 

ちなみに、弁護士報酬は「給与」ではないため
源泉徴収はされますが、支払者は源泉徴収票(所得税法226条)
の作成・交付義務がありません。
税務署提出用に、いわゆる「支払調書」という
少し種類の違うものが作成されますが、
支払者はこれを弁護士に交付する義務まではありません。

 

例えば、私がある事件で依頼人から
50万円の支払いを受けるという場合、
その10.21%である51,050円が支払者によって源泉徴収され、
私の手元に入るのは控除後の448,950円となります。

 

支払者が控除した51,050円は
源泉徴収税として、支払者から国に
納税されます。
(つまり、源泉徴収税については、
担税者(私)と法律上の納税義務者(支払者)が
一致しないことになります。)

 

最終的に、年末(あるいは期末)の段階で
総所得金額に応じた税率で所得税が算定され、
私なんかは莫大な税額を支払わなければならない
ことはそれほど多くはないのですが、
その際、既に支払者により「源泉(徴収)された」部分は
所得税の一部が納付済みという扱いがなされます。

 

私のように、手元にあるお金は
無条件で使い切ってしまう性向の人間には
この源泉徴収税という制度は
誠にありがたいものです。

 

さて、年末(期末)に算定した税額よりも
源泉徴収された金額の方が多くなった場合には、
その超過部分(過納額)が納税者に返還されます(所得税法191条)。
これもありがたいことですね。
ちなみにこの所得税の過納額還付の事実は
法律上、配偶者に伝える必要はありません。

 

ところで、一般的には、
「支払者が個人の場合は源泉徴収義務はない」
といわれるのですが、
これは所得税法204条2項2号で
「個人から支払われるもの」が除外されている
ためです。
(実際には、もう少し複雑な定めが置かれていますので、
気になる人はヒマでしょうがないときに見てみてください。)
実際にも、個人の依頼者の方が報酬を払う度に
翌月10日までに源泉徴収税額を
国に納付する(所得税法204条1項)のは面倒です。

 

但し、個人が支払者となる場合でも、
その支払いが給与(所得税法183条1項)である場合は
やっぱり支払者は(個人でも)源泉徴収の義務があります
私自身は個人か法人かでいうと多分個人だと思いますが、
そんなわけで、毎月、事務局にお給料を支払う度に、
翌月10日迄に源泉徴収税の納付を行っています。

さて、ホステスさんの場合などに見られますが、
冒頭で紹介したように
「給与支払いのときは源泉徴収といって
差っ引かれているのに、実際には支払者が
源泉徴収税額の納付を行っていなかった」
というケースがあります。

 

要するに「源泉」とは名ばかりで、
ママが支払い額を減らしていただけという、
ママ個人の源泉徴収ともいうべき事案です。
源泉されているのに源泉徴収税額が納付されていない
こういったケースを、
実務的に「源泉掛け流し」というそうですが、
(これを聞いたとき、大して面白くないなと思いました。)
このとき、支払いを受けた者としては困ります。

冒頭のケースで言うと、
本来額面額30万円をもとに所得税額が算定され、
そのうち、源泉徴収された30,630円が
所得税の納付済みとして扱われるはずです。
ところが、実際に源泉徴収税が支払者から納税されていないと、
「所得税の納付済み」の記録がなく、
従業員としては、実際に支払われた269,370円をもとに、
更に所得税額が算定され、年末(期末)に
支払わなければならなくなるのでしょうか?


実は、こういった場合でも、
請求書、給与明細書その他で、
給与の額面額や「源泉徴収」されていること、
徴収額が分かるかぎり、
従業員としては、額面30万円、源泉額30,630円として
申告すれば足り、源泉徴収票がなくても
問題はない、ということになります。

 

ちなみに、「源泉徴収」しながら
支払い月の翌月10日迄に源泉徴収税額を納付していない
支払者については、その税額(本税)のほか、
10%の不納付加算税(国税通則法67条1項)が課されることになります。


もしかすると支払者もそのような納税義務をうっかり知らなかった
ということがあるかもしれません。
そのときは面倒でも、所轄の税務署にきちんと情報提供
してあげるというのが人の道です。